話題の本(『人新世の「資本論」』)

noteに書いたものをこちらにも掲載。 note.com 前から話題になっていた『人新世の「資本論」』。 人新世の「資本論」 (集英社新書) 作者:斎藤 幸平 発売日: 2020/09/17 メディア: 新書 何となく気になっていた本であったが、2021年度の新書大賞に選ばれたこ…

マイケル・サンデルの本を読んでみる(『これから「正義」の話をしよう』)

10年前ほど前、NHKでハーバード白熱教室という番組が放送されていた。じっくり見ていないのであまり詳細は覚えていないが、大ホールでサンデル教授が大学生たちと討論しながら哲学について学ぶ内容だったと思う。 www2.nhk.or.jp 哲学に関する本はいくつか読…

読書録『人口減少社会のデザイン』

noteに載せた記事より note.com 人口減少社会のデザイン 作者:良典, 広井 発売日: 2019/09/20 メディア: 単行本 以前に買った本だが、忙しかったり、他の本を読んだりで後回しになっていた(積読はゆうに50冊を超えている…)。 この著者(広井良典さん)の本…

私たちの社会に正義はあるか

日経平均株価が、年末の株価としては31年ぶりの高値となった。 www3.nhk.or.jp 日銀やアメリカのFRB=連邦準備制度理事会などによる大規模な金融緩和や各国政府の経済対策の下支えもあって、厳しさが続く実体経済とかい離する形で株価の上昇が進みました。そ…

経済学って難しい

note.com 今、経済学の本を読んでいる。『マンキュー 入門経済学』というやつだ。 マンキュー入門経済学 (第2版) 作者:N.グレゴリー マンキュー 発売日: 2014/02/21 メディア: 単行本 何というか、経済学は勉強していて敷居が高く感じる。その理由はいろいろ…

”生きる”という復讐があった~「アウシュビッツ 死者たちの告白」~

NHK

最近忙しくてめっきり更新できていません。過去にnoteに書いた以下の記事をこちらにも載せます。今のところ一番読まれている記事です。 note.com NHKスペシャル「アウシュビッツ 死者たちの告白」を見た。 アウシュビッツ 死者たちの告白 - NHKスペシャル - …

記憶を継承するということ"ヒロシマの声"~

note.com noteに書いた記事より。 NHKスペシャル「“ヒロシマの声”がきこえますか~生まれ変わった原爆資料館~」を見た。 被爆者の高齢化が進むことで、戦争の記憶をいかに後世に伝えるかが課題となっていく。それを受けて大規模なリニューアルを行った原…

生きることの贈与~もののけ姫

note.com noteに書いた記事より。 もののけ姫を鑑賞した。 多くの人が指摘しているように、この作品では様々なテーマが扱われている。自然と人間、女性、ハンセン病など。 でも、やはり一番のテーマは「生きる」ことそのものに尽きると思う。 作品冒頭で、ア…

相撲と夏目漱石、そしてニーチェ

以前、NHKの番組「100分 de 名著 」を見た。吉本隆明の『共同幻想論』を扱う回だった。その番組の中で夏目漱石の回想(『思い出す事など』)が紹介されていた。 力を商にする相撲が、四つに組んで、かっきり合った時、土俵の真中に立つ彼等の姿は、存外静か…

傍らにいるということ

孔子、あるいは儒教に対してどのような印象を持つだろうか。 孔子の言行録は『論語』にまとめられており、彼の説いた思想はのちに儒教、やがて朱子学として発展していく。彼の思想は簡単にいうならば、「仁」や「礼」を為政者が身につけることで国を治めるこ…

大乗仏教と平等という概念について

奈良時代の仏教は鎮護国家を目標としていたが、やがて政治と深い関係を持つようになった。その結果、桓武天皇は平城京を捨て都を移している。 平安時代になると仏教の再興を目指して最澄や空海が登場する。 最澄は唐に渡って学んだあと、日本で大乗仏教の戒…

日本と仏教受容

日本に仏教が伝来したのはいつだろうか。確定した年代はないとされている。ともかく、6世紀ごろ、仏教は朝鮮半島の百済から来た渡来人によってもたらされた。 伝来初期、新しい宗教思想を取り入れるかどうかで崇仏派の蘇我氏と排仏派の物延氏が対立した。蘇…

アマルティア・センの講演

アマルティア・セン(1935-)はインド生まれの経済学者として知られている。 彼は不平等をめぐる議論において、単なるモノ=財の分配が問題なのではなく、財を用いて自身が望むことを達成できる能力=ケイパビリティ(潜在能力)こそが問題であると主張した…

憲法と条約の関係

憲法と条約はどちらが優位なのだろうか。 解釈上、条約優位説と憲法優位説の2つの説がある。 条約優位説の根拠は何か。 条約が裁判所の違憲審査の対象になっていないこと、憲法が国際主義的な思想を採用していることが理由として挙げられる。 憲法優位説の根…

有罪率99パーセント強の問題点

日本の刑事裁判の有罪率は99パーセント強と言われている。 検察が有罪だと判断した被疑者が実際に裁判で有罪判決とされているのだから、冤罪もほとんどなく、言うことなしなのだろうか。実際にはそんな単純な話ではない。 「疑わしきは被告人の利益に」とい…

北一輝

北一輝(1883-1937)という人物について、どのような印象を持つだろうか。 彼の著作『日本改造法案大綱』は二・二六事件の際に青年将校たちにバイブル視された。そのことが理由となり、銃殺刑を受けることとなった。 二・二六事件は陸軍の皇道派が起こした出…

美濃部達吉

「公然自由主義の撲滅を叫んで怪しまざるが如き、実に憲政破壊の風潮の著しき現れと存じ、小生微力にしてもとよりこの風潮に対抗して、これを逆襲するだけの力あるものにこれなく候えども、憲法の研究を一生の仕事と致す一人として、空しくこの風潮に屈服し…