私たちの社会に正義はあるか

日経平均株価が、年末の株価としては31年ぶりの高値となった。

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日銀やアメリカのFRB連邦準備制度理事会などによる大規模な金融緩和や各国政府の経済対策の下支えもあって、厳しさが続く実体経済とかい離する形で株価の上昇が進みました。

その結果、日経平均株価のことしの終値は、去年の年末と比べて3787円55銭、率にして16%上昇し、年末の株価としては1989年以来、31年ぶりの高い水準で取り引きを終えました。

記事の本文では、実体経済との乖離が指摘されている。

実際、私もこのニュースを見たとき、違和感を覚えた。

なぜ株価が上昇するのか? 株価が上がる要素は何か? 報道によると、バイデン政権への期待、ワクチン開発への期待などが主な要素であるとのことだった。株価は将来への期待によって変動するから、現在の株価の上昇は、何も根拠がないわけではないようだ。

 

実際、10~12月期の法人企業景気予測調査によると、中小企業は厳しい状況であるが、大企業では大幅に改善しているようだ。

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3カ月前と比べた大企業製造業の景況判断指数は21・6(前回は0・1)となり、統計を始めた2004年以降で最大になった。非製造業を含めた全産業も11・6(前回は2・0)で過去3番目の高さ。新型コロナの感染「第3波」が広がるなか、マイナス圏に沈んだままの中小企業との差が際立った。

 結局、1万6000円台まで下がった株価は2万7000円台まで上昇した。大企業の株を保有していた人はコロナ禍でも儲けることができた。

 

これは資本主義社会の仕組みとしては何もおかしなことはない。

株式を買う人がいるからこそ、会社は資金を調達することができる。今更、株で儲けるのはおかしなことだから株式市場をなくす、なんてことはできない。

 

それでも、この社会に対する違和感は拭いきれない。

それは、看護師などのエッセンシャルワーカーの状況が困難を極めているからだ。

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「精神的な負担が大きくなる中、収入は減っている。初めて看護師を辞めたいと思った」

「お金という対価をほしがる自分も嫌になっている。疲れ果てて頑張れなくなってきている」

今の社会は、富が公平に分配されているのだろうか。人間が働くというその営みへの尊厳はあるだろうか。

 

仕事への対価は希少性や需給バランスによって決まる。経済学によればそれが「合理的」というわけだ。でも、合理的な決定が必ずしも公平や公正なものであるとは限らない。

 

私たちの社会に正義はまだあるのだろうか。

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借金があり、年老いた両親がいるので、今、帰国したいわけがないのに自分の都合で辞めたとされて、本当に悔しいです。

 

4月の緊急事態宣言下の生活で私たちは、社会が様々な人々の営みによって支えられていることを感じたはずだった。宅配業者、スーパーの店員など、「ステイホーム」できない人々が私たちの生活を支えてくれた。現在、医療従事者は年末の休みも返上で働いている。

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国連本部に展示されている、ノーマン・ロックウェル氏のモザイク画「黄金律」

Do unto others as you would have them do unto you.

自分が他人にしてもらいたいように他の人にしなさい

黄金律に示される利他の精神。この精神が今まさに必要とされている。

 

こうした利他の精神は江戸時代の思想家である石田梅岩も述べている。

まことの商人は先も立ち、われも立つことを思ふなり

(正しい商人とは、相手のためになって喜ばせ、自分も正当な利益を得る者をいう)

2021年、利他の精神が広まることを願っている。