日本と仏教受容

 日本に仏教が伝来したのはいつだろうか。確定した年代はないとされている。ともかく、6世紀ごろ、仏教は朝鮮半島百済から来た渡来人によってもたらされた。

 

 伝来初期、新しい宗教思想を取り入れるかどうかで崇仏派の蘇我氏と排仏派の物延氏が対立した。蘇我氏が勝利し、その後仏教はを鎮護国家のために利用されていった。

 

 ここで大切なのは、「伝来した仏教が、異国から到来した当時の最新の文明であった」(65頁)点である。

 

 日本よりも進んだ国としての中国。そこで最新の思想を学ぶために、例えば最澄空海などはまさに命がけで海を渡っていった。幕末から明治にかけて、西洋の学問が最先端のものとして扱われたのと同じ構図が仏教にも当てはまる。

 

 結果的に、仏教は日本の社会に浸透していった。

 

 『古事記』や『日本書紀』にみられるような価値観、例えば集団的秩序を乱す行為を「天つ罪」として扱う一方で、それらの穢れは祓えによって元に戻るとする考え方とは明らかに異なる価値観が浸透していったのである。前世からの因果、悪行に対する報いなどの考え方がまさにその代表である。

 

 仏教が人々の生活に根付いていく一方で、仏教が外来のものであるという感覚もどこかで残り続けた。

 

「仏教全盛期のときは表面化しなかったが、深いところで外来のものであるという意識を残し続け、近世に至って国学の反仏教論に、また明治初期の廃仏毀釈という宗教政策に影響を与えたことは記憶されるべきであろう」(66頁)

 

 宗教意識がないといわれる日本。これから先、日本において仏教はどのような形であり続けるのだろうか。

 

参考 清水 正之『日本思想全史』(筑摩書房、2014年)

 

日本思想全史 (ちくま新書)

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